- 肝臓の70%以上がヒト肝細胞に置換されたマウス。
- 肝臓にヒトの薬物代謝酵素やトランスポーターが発現します。
- 薬物動態研究や肝炎ウイルス研究に利用されます。
- 肝臓から単離したヒト肝細胞をin vitro薬物動態・安全性評価へ利用できます。
ヒト肝キメラマウスの作製手順
- TK-NOGマウス*にガンシクロビルを投与し、肝傷害を誘導します。
- 血漿ALT活性を目安に肝傷害の程度を確認し、ヒト肝細胞を脾臓経由で移植します。
- 血漿中のヒトアルブミン濃度を指標に肝臓におけるヒト肝細胞の置換率を推定します。
*肝臓にウイルス由来チミジンキナーゼ(TK)を発現するNOGマウス. ガンシクロビルを投与すると肝臓のTKによりDNA合成阻害物質であるガンシクロビル三リン酸が生成され肝傷害が誘導されます。
血漿中ヒトアルブミン濃度によるヒト肝細胞置換率の推定
- 血漿中ヒトアルブミン濃度を指標にして肝臓におけるヒト肝細胞の置換率を推定します。
- 移植後約8-12週で肝臓におけるヒト肝細胞の割合が70%以上に達します。
肝組織におけるHLAおよびCYP3A4の発現分布
ヒト肝キメラマウス肝臓の大部分がヒト肝細胞(HLA陽性細胞)に置換されます。
ヒト肝キメラマウス肝臓のCYP3A4の発現分布はヒト肝臓と類似しています。(中心静脈周囲に局在)
ヒト肝キメラマウス肝臓におけるヒト薬物動態関連遺伝子の発現量
ヒト肝キメラマウス肝臓では、ヒト薬物動態関連遺伝子がヒト肝臓と類似したレベルで発現しています。
In vivo薬物投与実験によるヒト代謝物生成の予測
- マウス肝AOX酵素活性は低いため、カルバゼラン投与後のマウス血漿に検出される4-オキソカルバゼランは僅かです。一方、ヒト肝キメラマウスでは肝臓のヒトAOX1によりカルバゼランが速やかに代謝され、血漿中に4-オキソカルバゼランとその誘導体が豊富に検出できます。
- ヒト肝キメラマウスはヒトにおけるAOX依存的な薬物代謝を再現できるモデルであることが示唆されました。
ヒト肝キメラマウスの主な用途
- ヒトにおける主要代謝経路および排泄経路の同定
- ヒト循環血中の代謝物の予測
ヒト肝キメラマウスから単離した肝細胞の特徴
- ヒト初代培養肝細胞に認められる多角形状で多核(矢印)の細胞形態を保持しています。
- 典型的なヒトP450誘導剤によるCYP1A2, CYP2B6,およびCYP3A4の酵素誘導が認められます。
- 代謝クリアランス、酵素誘導などの薬物動態評価およびマラリア原虫の感染実験に使用できます。
代表的な実験動物