微生物制御研究室
かつての腸内フローラ研究は、主に「何が腸内にいるのか」という探索的なものでしたが、1990年代以降、分子生物学的の発展と共に腸内フローラとヒトの健康に関する研究が加速しました。近年では微生物群集の遺伝子を網羅的に調べることが可能なメタゲノム解析が開発されたことで、腸内フローラが肥満、糖尿病、アレルギー、さらには精神疾患にも関与する可能性が示唆されています。腸内フローラの研究は従来から主にマウスが用いられていますが、解析技術の向上によりマウスには生着しにくいヒトの腸内細菌もあることが解ってきました。そこで私たちはヒトに近縁かつヒトに近い腸管構造を持つマーモセットを用いた研究の着想に至りました。一方で、マーモセットを用いた腸内細菌研究を行うためには、腸内に人工的に定着させた微生物それぞれの働きを詳細に解析する必要があり、体内や飼育環境中に他の微生物が全く存在しない飼育環境およびマーモセットを作り出す必要がありました。私たちはそれを実現するために、ビニールアイソレーターと呼ばれる特殊な飼育器材を用いて、無菌マーモセットおよび無菌飼育に関する技術を開発し、ヒトの腸内フローラを模倣したマーモセットを用いた研究を続けています。今後はより効率的な飼育方法の開発ならびにヒト腸内フローラモデルマーモセットの確立を目指し、ヒトの健康に貢献するための取り組みを進めて行きたいと考えています。
※代表的な研究論文
- Production of a heterozygous exon skipping model of common marmosets using gene-editing technology.
Sato K, Sasaguri H, Kumita W, Sakuma T, Morioka T, Nagata K, Inoue T, Kurotaki Y, Mihira N, Tagami M, Manabe RI, Ozaki K, Okazaki Y, Yamamoto T, Suematsu M, Saido TC, Sasaki E.
Lab Anim (NY). 2024 Sep 53(9):244-251.
- The common marmoset in biomedical research: experimental disease models and veterinary management
Inoue T, Yurimoto T, Seki F, Sato K, Sasaki E.
Exp Anim. 2023 May 17;72(2):140-150.
- Genetic engineering in nonhuman primates for human disease modeling.
Sato K, Sasaki E.
J Hum Genet. 2018 Feb; 63(2):125-131.
- Generation of a Nonhuman Primate Model of Severe Combined Immunodeficiency Using Highly Efficient Genome Editing.
Sato K, Oiwa R, Kumita W, Henry R, Sakuma T, Ito R, Nozu R, Inoue T, Katano I, Sato K, Okahara N, Okahara J, Shimizu Y, Yamamoto M, Hanazawa K, Kawakami T, Kametani Y, Suzuki R, Takahashi T, Weinstein EJ, Yamamoto T, Sakakibara Y, Habu S, Hata J, Okano H, Sasaki E.
Cell Stem Cell 2016 Jul 19(1): 127-38.